宇宙警察ロールちゃんの事件簿01

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 「宇宙警察」といえば、古いフィルムにもヒーローとして度々題材にされ、シリーズ化もされていた華やかでカッコイイ憧れの職業だ。
 だが、実際の所はリスクばかりでかくて地味で疲れる。給料は良くても遊ぶ時間などない上に、仕事によっては捜査費用に半分以上は持っていかれてしまう。それでもパトロールを目指す者が多いのは、出世さえ出来れば老後の心配から解放されるからだろう。
 女性である自分なら、事務の仕事でお茶汲みにでも徹する道もあった。しかし、かねてからの望み通りに自分はパトロールに所属している。辛いことも当然ある。でも、後悔した事はない。ないのだが……部下が出来て以来、ツキに見放されているような気がしてならない。 
 そうでなければ、潜入する前からこんなに息を切らせて走らなければならない理由が無い。
 少し後ろを走る部下に激を飛ばしながら、ロールは本部で受けた指令を思い返していた。



「潜入捜査、ですか?」
「そう」

 にこやかに微笑む上司に不安を感じつつ聞き返すと、彼女は長い赤髪をいじりながら軽い口調で続けた。

ロールちゃんは社交場って出たことないでしょ。意外と楽しいのよ? 腹黒い思惑を巡らせながら、なにくわぬ顔して張り付いた笑顔浮かべる福だぬき達を見るの。今回は裏のオークションだから、あの手この手で出し抜こうとする素敵なショウが見れるわ」
 心底面白いのだろう。上司の肩が堪えきれずに震えた。ロールには理解できない趣味だ。
「その……オークション現場を押さえて、参加者を捕えろという事なのでしょうか」
「まさか! 
 そんな大規模なこと、ロールちゃんだけで出来る訳ないでしょ? 
 あなたに頼むのは、潜入だけ。表向きは普通のオークションだから、その実態を調べてほしいというのと……そうね。可能であればオークションを滅茶苦茶にして来て頂戴」
「…………はい? 
 それでは彼らに警戒されて、以降の捜査がやりずらくなるのでは?」
「大丈夫よ。何なら目玉商品とか破壊しちゃっても構わないわ」



 結局、それ以上の詳しい話はしてくれなかった。
 初のオークションへの潜入任務で不安だらけなのに、出鼻をくじくように二人はオークションに遅刻しかけていた。ペアを組むことになったローザの、ネクタイをうまく結べなかったなどという下らない理由で。いや、裏オークションが開かれるのであれば入場者は厳しくチェックするだろうし、たかがネクタイとはいえ油断は出来ないのだが、こんなことでと思ってしまう。
 会場に入れなければ、その時点で捜査は失敗になってしまうのだから、ロールが焦るのは当然だろう。
 事前に渡されていた招待状(勿論、偽造である)を渡し、無事に会場である宇宙船に乗り込んだ所でやっと一息ついた。
 慌てないようにと早めに準備を開始したのに、こんなギリギリでは先が思いやられる。

「はぁっ……はぁー……間に合って良かった」

 オークションに参加する以上、目立たない程度に着飾る必要がある。履きなれない高いヒールで走るのは、訓練時代に経験があるとはいえ辛いものがある。

「すごく似合ってる? 本物のボーイさんみたいだ……って? 照れるよ、フリル」

 同じように走ってきたローザは、もう会場の端で小さなお人形のような少女と戯れている。傍から見ればいい年した男が人形遊びをしているようにしか見えないが、フリルと呼ばれた少女は吸血貴という宇宙生物である。手のひらサイズの大きさで、背にコウモリのような羽を持ち、血液を餌とするらしい。
 潜入用のボーイ服に身を包んだローザとドレス姿のフリルは、さながら旧時代の物語に出てくる登場人物のようだ。頭に巻いている包帯と彼の人相も相まって、ホラー映画のワンシーンのようにも見えるが。

「もうアザなどないのでしょう。包帯は取ったらどうです」

 毟り取るようにしてローザの包帯を取る。
 最初からあまり期待はしていなかったが、これでは一人の方がマシだったのではと思いたくなる。目的を忘れないように念押しして、ローザとは別の方へ別れた。
 


 落ち着いて周囲を見てみると、成程、大物ばかりが集まる会場だけあって、眩しいぐらいに船内は煌びやかだ。
 宝石を散りばめたシャンデリアや、高そうな調度品、旧時代の画家のサインの入った絵画……一般人には一生縁のなさそうな品々が、どこに目をやっても入ってくる。それは会場に集まっている客たちも同様で、高級ブランドのロゴの入った一品物を手にした老若男女が集まっている。
 (ここまでくると、一品物じゃない物の方がレアだわ)
 定期便も通っていない辺境の惑星。その個人ターミナルに停泊している宇宙船の中が、今回のオークションの会場だった。それはつまり、参加するためには個人所有のフネが必要ということで、そんなものを持っているのは宇宙を荒らす犯罪者か金持ちぐらいだ。
 どう考えてもこのオークションは怪しい。だからこそ、確証が取れるまでは慎重に動かなくては。
 上司……ロゼは適当でいいと言っていたが、そんな言葉を真に受けるほどロールは馬鹿ではない。


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あんたんが書いてた話に色々足したりしたものですw
こっちも続きちゃんと書きたい。