幸せの白羽

幸せの色は何色だと思いますか?
里を出た日から、それが自分の口癖になりました。



幼い時分より言われていたことがあります。
「お前は一族の中でも特別美しい白羽根だから、皆に幸せを与えなさい」
周りの仲間達は自分を見てありがたそうにしていたけど、自分には良く分かりませんでした。
幸せを与えるとは、どうすれば良いのでしょう。
自分にそのようなことが出来るとはとても思えませんでした。


里の近くには黒い羽根を持った一族も住んでいました。
しかし、彼らと話をしたことはありません。
食べ物を探しに出ると彼らに会うこともありますが、皆は黒い羽根を見つけると矢を射掛けます。
随分昔に黒羽根が里を出て行って以来、白羽根の里とは仲が悪いのだそうです。
ある時、黒だって美しいのにどうして差別するのですか、と問うた事がありました。
すると父はとても厳しい表情で、
「黒の者達は他の者の幸せを奪っているのだ。だからあのようなどす黒い色をしている」
そう言いました。


白は幸せを与えているから真っ白で。
黒は幸せを奪っているから真っ黒なのです。


「それでは、黒が幸せの色なのではないのですか」
父にぶたれたのはこの時が最初で最後でした。




自分が生まれて7つを数えた頃、流行り病が里を襲いました。
病に効く薬草は里の者みんなを助けられるほど多くはありませんでした。
「お前が薬を飲みなさい」
「いいえ。自分は皆に幸せを与える白羽です。ですから、これは父上が飲むべきです」
「それは違う。お前は幸せを与える為に、これからも生きなくてはならないのだ」
父は最後まで薬を飲もうとはしませんでした。
自分もまた、薬を飲もうとはしませんでした。
父の力強い瞳が閉じられた後、自分は父の分の薬を持って外へ出ました。
里には病にかからなかった大人や、助かった子供達が残っていました。
父の死を最後に、病は何処かへ去っていってしまったようでした。
自分は薬を飲まなくても平気だったのです。
「白羽様も無事だったのですね」
「やはり白羽様には幸運が味方しているのだ」
彼らは自分の姿を見つけると、口々にそう言いました。
それまで苦しそうにしていた者も、自分が来たから元気になったと、笑顔を作って笑いました。
そうして話しかけられるほどに、胸が苦しくなりました。


「幸せの白羽なら、どうして自分の父も助けられないのですか!本当に白が幸せの色なら、里は流行り病にはかからなかったのではないですか!!」


黒く塗りつぶされるような想いが湧き上がったかと思うと、自分は今まで出したことのないような大きな声で怒鳴っていました。
彼らは一瞬驚いた表情になり、次には悲しそうに自分を見つめました。
自分は皆を幸せになど出来ないのだと思うと、心だけでなく羽根まで黒く染まるような思いがしました。



耐え切れなくなった自分は、握り締めたままの薬瓶だけを持って里を出ていました。
この時ほど無茶な飛び方をしたことはありません。
羽根が痛み、まともにバランスを取れなくなるまで空を飛んだのです。
疲れ果てた自分は真っ逆さまに落ちました。落ちた先は冷たい地面ではなく、どこかの湖のようでした。
水際から這い上がると、自分は落ちてきた湖を見ました。
上空から飛び込んだ衝撃で、水面には幾重にも波紋が広がっていました。
その波紋がおさまるまで、自分は水面を眺めました。
静かになった水面は、丁寧に磨いた鏡石のように自分の姿を映し出します。
黒く染まったと思い込んでいた自分の羽根は、変わらず美しい白羽のままでした。
暫く見つめていると、今度は小さな波紋がぽたりぽたりと広がりました。
滴が落ちる度に水面は歪み、自分の姿はまた見えなくなりました。


一定の間隔で湖に落ちていた滴が止まった頃、自分の胸中も落ち着きを取り戻していました。
辺りを見回すと、ここは深い森の中のようです。
ふと、足下にキラキラ光る薄くて丸いものが落ちているのが目に映りました。手に取って見ると、それは細かな細工が施されているようで、太陽や金冠が描かれていました。


「これが幸せの色なんだろうか」


自分は金色のキレイな石を袋に入れて、目的もなく歩き始めました。
背中の羽根はまだ痛みましたが、歩く分には不自由ないようでした。
自分はこの世界の事を何も知らないのです。あの黒羽根の一族の事も、たった今見つけたキレイな石の事も。これでは本当の幸せの色も見つけられない。――そう思ったのです。
それに、今すぐ里に帰る気分にはなれませんでした。
森は複雑で、道も知らない自分では迷ってしまいそうでしたが、何故か外へ出るのに迷いませんでした。
どこをどう通ったのかは覚えていませんが、一つだけ印象深い香りがあります。
それは白百合のような芳しい香りでした。



 + + + + + +


この後さまよってた所をヴィアさんに助けられてスーリヤへ。
しかし、どうしてあの人は白百合の香りを纏ってるんだろうw(特に意味は無いという)
白百合じゃなくても花の香り振りまいとけばいいよ!柔軟剤の香りだよ!(ネーヨ
白羽根どころか黒羽根まで出てきちゃいました。黒羽根キャラは特に考えてないのでご自由にどぞ←
混血に対して好意的では無いので、白羽根たちは純血種だけだと思います。反面、同族ならなんでも有りかもしれない。
(他種との混血=黒羽根なのかもね。だから混血が忌み嫌われてるとか)
白羽根族は「オセル」というヒト達です。
一応里はありますがここにしか居ないというわけではなく、あっちこっちに住んでるんですね。住む場所にこだわりが無いので、同じ仲間自体がオセル(故郷)なんだ・・・・・・という意味です。


しまった。名前が出てなかった。
白羽の彼の名前はルクレガン・エドラムです。名字は無くて「ルクレガン・エドラム」で一つの名前。
ルク→ミヤマガラス
レーガン→小さな王様(ゲール語)
エードラム→光(ゲール語)
そして天然たらし(笑)隊員や女性からは「白羽の王子様」とか呼ばれてたら良いよ!w
当初はニール君と同年代にしようと思ってたんだけど、ヴィアさんとの会話とか周囲からの信頼とか考えると年齢が上がってしまい・・・(笑)見た目もちょっと考え直す必要があるなぁ。
年表見てみると、フリードさんが2歳の時にルクレガン(8歳)がスーリヤに来たんだね。
くそ真面目なルクをからかうちっさいフリードとか可愛くね←


◆ルクレガン・エドラム
愛称:ルク、エドラ等
種族:オセル(故郷) 性別:男
年齢:38歳。21年前にギュールズに入団。
家族:母は消息不明。父は里の長で、流行り病で亡くなる。
性格:物静かで人見知りだが、困っているヒトは自分から助けに行く。責任感が強い。
  過去の経験から他人の病気に過剰に反応してしまい、風邪でも取り乱してしまう。
  幸せの色が何色か知りたい。
特性:白い羽が生えていて、空を飛べる。
 (羽根は出し入れできるけど背中が空いてる服じゃないとダメ)
武具:槍



うごは・・・投票は絶対出すよ!まだ完成出来てないけど!今月中だよね?
ハロウィンネタも話だけは思いついてるんだけどー!描いてないー!
ルクさんのお話とか書いてるからッ。(でも書かないと忘れるから
某緑竜のお嬢さんを助けるルク兄さんのお話はまた今度(笑